2010年03月20日

東急不動産、「和解成立」後も新たなトラブル

手続きめぐり、和解金支払いが停滞
初出:林田力「東急不動産、「和解成立」後も新たなトラブル」オーマイニュース2007年7月9日
 東急不動産株式会社(東京都渋谷区、植木正威社長)が販売した新築マンションを巡るトラブルに関し、訴訟上の和解が成立したにも関わらず、和解条項の履行で紛争が再燃している。一旦、和解まで漕ぎつけたにも関わらず、紛争が再燃することは珍しいことだ。

 元々の紛争は、新築マンション購入者、すなわち記者(=林田)が、売主の東急不動産株式会社に売買代金の返還を請求した裁判である。

 東急不動産は、康和地所株式会社(東京都千代田区、夏目康広社長)から転売された土地(江東区東陽1丁目)にマンション「アルス」を建設・販売した。

 東急不動産は、マンション「アルス」建設時に康和地所株式会社の従業員を通じて、以下の説明を受けた。

 「アルス」に隣接する地所有者が、「アルス」竣工後に、隣接地の建物を建て替えること、それは作業所なので騒音があること──の2点である。

 康和地所は東急不動産に対し、「アルス」購入を検討する人たちに、「隣を建替え工事をする、騒音があることを、伝えて欲しい」と伝え、東急不動産側は了解した。

 にもかかわらず、東急不動産(販売代理:東急リバブル)側は、「アルス」購入を検討する客たちに「工事、騒音」のことをまったく説明していなかった。

 「アルス」301号室の購入者(=記者)は、部屋の引渡し後に、これら事実を知った。「工事、騒音」の説明を販売した東急リバブル側から、まったく受けていなかった。

 301号室の購入者は、「消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)」に基づき、「アルス」売買契約を取り消した上で、売買代金2870万円の返還を求め、東京地方裁判所に提訴した。

 東京地方裁判所民事第7部(民事第7部、山崎勉裁判官)は、2006年8月、「消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)」による不動産売買契約取消しを認定して、売買代金全額返還を命じる、画期的な判決を言い渡した(東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)第3018号、売買代金返還請求事件)。

 「消費者契約法」に基づく契約取消しが認められた事例はそれまでもあった。しかし、ほとんどの消費者にとって一番大きな買い物である、不動産売買契約の取消しが認められたのは、この判決が最初である。判決内容は、

 「被告(=東急不動産)は、本件売買契約の締結について勧誘をするに際し、原告に対し、本件マンションの完成後すぐに、北側隣地に3階建て建物が建築され、その結果、本件建物の洋室の採光が奪われ、その窓からの眺望・通風等も失われるといった住環境が悪化するという、原告に不利益となる事実ないし不利益を生じさせるおそれがある事実を、故意に告げなかったものというべきである」

 控訴審の東京高等裁判所においては、一審判決に沿った内容の和解が成立した。

 すなわち東急不動産が、2007年3月までに金3000万円を、301号室購入者に支払い、一方、購入者は301号室を、2007年6月末に明け渡すことを骨子とする和解だった。

 ところが、東急不動産と301号室購入者との間にトラブルが再発した。

 和解金の支払いは、当事者(東急不動産と301号室購入者)間の協議で、2007年3月28日午前11時に、三井住友銀行深川支店において、現金で支払いが行われることになっていた。

 ところが、その当日、東急不動産は3000万円の支払いを拒否したのだ。

 結果、「アルス」301号室購入者と東急不動産の主張は全面的に対立することになった。

 論点は、大きく3つある。これらの論点は相互に関係している。

 第1に、「アルス301号室所有権移転登記の登記原因」である。東急不動産側は、登記原因を「和解」とし、登記原因の日付を3000万円支払日とし、上記内容を記載した登記原因証明情報を作成して、共同申請をすることを求めた。

 しかし、和解調書には「平成18年12月21日付『訴訟上の和解』を原因とする」と明記してある。そこで購入者側は、和解調書記載のとおりとすることを主張した。

 これに対し、東急不動産側は「東京法務局に確認したところ、訴訟上の和解では登記できないと言われた」と反論した。ところが、購入者側が、東京法務局に確認したところ、東急不動産側の説明は虚偽であることが判明した。

 第2に、「アルス301号室所有権移転登記手続き」である。

 東急不動産側は、東急不動産の用意した司法書士への委任状を提出することを要求した。これにより、東急不動産と被控訴人(=購入者=林田)の共同申請で移転登記すると主張した。確かに、第1で東急不動産側が主張したように「登記原因を和解」とするためには、共同申請による必要がある。

 ところで本件は、確定判決と同一の効力を持つ和解調書に規定されているため、被控訴人が東急不動産から3000万円を受領した時点で、登記をする旨の意思表示が擬制される(民法第414条2項但し書き、民事執行法第174条)。

 これにより、被控訴人は「登記手続きする」という義務を果たしたことになり、登記申請手続きをすることは不要である。その結果、東急不動産側は登記を単独申請できる(不動産登記法第63条)。

 東急不動産側が、単独で登記申請できる以上、「アルス301号室」の購入者が、登記義務者となって登記申請する必要はない。

 従って東急不動産側のが司法書士に対して、301号室購入者が「印鑑証明」を用意して、実印を押した委任状を提出する必要性はない。

 これに対し、東急不動産側は、「被控訴人が登記手続きをする」との和解条項は、アルス購入者が、実際に登記申請を行う義務を定めたものであると解釈し、反論する。すなわち、東急不動産側は、自分たちの用意した司法書士に、委任状を提出しない以上、被控訴人(=301号室購入者)は義務を果たしていないので3000万円を支払えないと言う。

 「アルス301号室」購入者の再反論は以下の通りである。

 和解条項には、アルス購入者が申請人となって登記申請をしなければならないという明示的な記述はない。存在しない以上、一般的な解釈に従い、登記意思を擬制したに過ぎないと解釈される。

 和解調書で意思表示が擬制される以上、東急不動産側が3000万円を払えば、アルス購入者は所有権移転登記をする意思表示がなされ、「被控訴人が登記手続きをする」との義務を果たしたことになる。

 よって、東急不動産が所有権移転登記を単独申請することに何の障害もない。東急不動産側は、「アルス301号室」購入者から、委任状や印鑑証明を取得しなくても、和解調書を登記原因証明情報として提出しさえすれば良く、共同申請にするよりもストレートである。

 論点の3つ目は、「アルス301号室」所有権移転登記を単独申請する場合の手続きについて。

 第2の被控訴人(=購入者)の主張の通り、東急不動産が3000万円支払えば、被控訴人の登記する意思が擬制されるため、東急不動産は単独申請できる(不動産登記法第63条)。

 単独申請する場合、和解調書に執行文を付与する必要があり、執行文付与申請時に反対給付の3000万円支払いを証明する必要がある。

 被控訴人は、反対給付の証明は文書で行わなければならないため(民事執行法第174条第2項)、3000万円受領と引き換えに渡す受領書を、執行文付与申請時に提出すればいいと主張した。

 これに対し、東急不動産側は、証明する文書は公文書に限られるとして法務局に供託するしかないと主張した。

 これに対し、「アルス301号室」購入者は、以下のように反論した。

 東急不動産は、和解調書に執行文付与申請をしなければならないが、それが面倒ということは「アルス」購入者に、登記申請を押し付ける理由にはならない。

3000万円を支払ったことの証明は、文書でなければならないが、公文書でなければならないという制限は存在しない(民事執行法第174条第2項)。購入者に3000万円を支払い、受領書を受け取り、それを証拠として執行文付与申請をすればよいと主張する。

 両者の溝は埋まらず、3000万円が支払われないまま、決裂した。

 今後は強制執行手続きなど「司法の場」で改めて争われることになる。
http://hedo.at.infoseek.co.jp/m/home/wakai.html
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』を読む
http://hayariki.fruitblog.net
カーリル | 東急不動産だまし売り裁判―こうして勝った
http://calil.jp/book/4904350138
http://astore.amazon.co.jp/hayariki-22/detail/4904350138
「警察、学会、農業……の危険な裏 告発本が明らかにした「日本の闇」」サイゾー2010年1月号
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100122-00000301-cyzoz-soci
http://hayariki.seesaa.net/article/139653906.html
住宅購入促進は景気回復に役立つか
http://www.pjnews.net/news/794/20100314_8
http://news.livedoor.com/article/detail/4658838/
posted by 林田力hayariki at 19:00| Comment(0) | TrackBack(1) | 住まい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月18日

東急コミュニティーが管理組合の財務文書流出

初出:林田力「事故を公表せず、隠そうとする体質が多い」オーマイニュース2007年5月17日
貯金口座や振込み依頼書などが流出した
株式会社東急コミュニティーは、ある管理組合宛の文書を外部に流出させた。
 漏洩されたのは、同社東京東支店が、管理を受託するH東陽町管理組合(江東区千石)の財務文書等である。H東陽町管理組合は、東急コミュニティーに管理を委託し、東京東支店が担当している。
 東急コミュニティーから判明した流出文書は、以下の通りである。
 ・ 組合管理台帳預金口座一覧
 ・ 三井住友銀行宛残高証明依頼書兼預金口座振替依頼書
 ・ UFJ銀行宛残高証明依頼書
 ・ 東京三菱銀行宛残高証明依頼書兼預金口座振替依頼書
 流出文書により、H東陽町管理組合の預金口座開設金融機関名や預金残高、当時の管理組合理事長宅の住所や電話番号が分かってしまう。
 これらの文書は、同社からH東陽町管理組合役員宛に送付されるべきものであった。
 ところが、同社東京東支店担当者は、何故か別のマンション管理組合であるA東陽町管理組合役員に送付したのである。A東陽町も同社東京東支店に管理を委託し、H東陽町の担当者と同じ人物が担当していた。
 A東陽町管理組合役員からの連絡によって文書流出が判明(2006年1月17日)。
com_rouei2.jpg
 しかし、文書流出発覚後の同社の対応は遅かった。
 東急コミュニティーが、管理組合に文書で報告したのは3カ月後の2006年4月19日である。
 管理組合役員による、再三の説明要求の後である。
 しかも、「当時の担当者が、すでに退職している関係から調査は不可能であり、何卒ご容赦頂きたく」と言うだけで、文書流出の詳細は不明のままである。
 東急コミュニティーには、自社の誤りを積極的に調査・公表し、再発防止につなげる事をしないで、隠蔽しようとする体質があるのではないかと疑わせる。
 情報漏洩への対処は、積極的に事実を公表した方が、信用を失う度合いが少なくて済むはずだ。隠蔽しようとすれば、大きく社会的信用を失ってしまうことは経営の常識である。

金銭着服事件発表の東急コミュニティーでは文書流出も
http://www.janjannews.jp/archives/2896250.html
林田力『東急不動産だまし売り裁判』(@hayariki) - Twilog
http://twilog.org/hayariki
住宅購入促進は景気回復に役立つか
http://www.pjnews.net/news/794/20100314_8
http://news.livedoor.com/article/detail/4658838/
posted by 林田力hayariki at 21:25| Comment(0) | TrackBack(5) | 住まい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月16日

東急不動産の遅過ぎたお詫び

「和解成立」後も続いたトラブルの顛末
初出:林田力「東急不動産の遅過ぎたお詫び」オーマイニュース2007年10月9日
 東急不動産株式会社(東京都渋谷区、植木正威社長)は自社ウェブサイトに以下の「お詫び」を掲載した(東急リバブル株式会社のウェブサイトにも同種の「お詫び」が掲載されている)。私は2007年10月に入って確認した。

 「弊社が平成15年(2003年)に江東区内で販売致しましたマンションにおきまして、北側隣地の建築計画に関する説明不足の為にご購入者にご迷惑をおかけした件がございました。本件を踏まえまして社内体制を整え、再発防止及びお客様へのより一層のサービス提供を行なってまいる所存でございます」
owabi.jpg
 これは東急不動産(販売代理:東急リバブル)が江東区東陽で販売したマンション「アルス東陽町」301号室を指す。

 販売時に不利益事実(アルス東陽町竣工後に隣地を建て替えること、作業所になるので騒音が発生すること)を説明しなかった。東京地裁2006年8月30日判決は東急不動産の消費者契約法第4条第2項違反(不利益事実不告知)を認定し、売買代金全額2870万円の返還を命じた(平成17年(ワ)第3018号)。そして東京高裁において一審判決に沿った内容の訴訟上の和解が成立した(参照「東急不動産の実質敗訴で和解」)。

 しかし訴訟上の和解成立後も、紛争は再燃した(参照「東急不動産、『和解成立』後も新たなトラブル」)。

 アルス301号室の所有権移転登記の方法を巡って対立したのだ。アルス301号室の売買契約が消費者契約法に基づき取り消されたため、その所有権を被害者(=記者・林田)から東急不動産に戻さなければならない。被害者側は登記原因を和解調書記載の通り「訴訟上の和解」として、和解調書に基づき東急不動産が単独申請することを主張した。

 これに対し、東急不動産は和解調書を使わず、東急不動産が用意した司法書士を使って被害者と東急不動産で共同申請することを要求した。具体的には東急不動産が用意した司法書士に被害者が実印を押した委任状を提出することを要求した。

 被害者が拒否すると、東急不動産は和解調書で定められた金銭の支払いを拒否した(2007年3月28日)。その後、東急不動産は4月2日に東京法務局に3000万円を供託した(平成19年度金第252号)。

 被害者側は2007年5月13日、東急不動産に内容証明郵便を送付し、和解調書に基づく金銭支払いを請求し、合わせてブローカーが勤務先に圧力をかけさせることの停止を要求した。これに対し、東急不動産は「回答書」(2007年5月18日付)で全面的に拒否したが、その理由が問題であった。

 東急不動産は「被害者の代理人弁護士が供託金の受け取りについて法務局と相談し、それを受けて東急不動産代理人弁護士と折衝中」であることを拒否の理由とし、被害者の弁護士が東急不動産の要求に従って供託金を受け取る方向で折衝している、と主張したのだ。

 これは完全な虚偽であった。被害者は裁判時には弁護士を訴訟代理人としていた。しかし、東急不動産が回答書を送付した当時、委任関係にはなく、東急不動産の弁護士と折衝した事実もない。

 被害者が直接弁護士に確認すれば直ぐに露見する虚偽を回答した東急不動産の真意は不明である。

 話し合いによる任意的解決を潰すことが目的であったならば、その狙いは奏効したと言える。してもいない折衝をしていると言われれば弁護士が怒るのは当然であり、弁護士間で話し合いして解決するという可能性を完全に絶つことができる。

 任意的解決の可能性が消滅したため、被害者は監督官庁である東京都都市整備局に申し出た。東京都の行政指導によって、東急不動産は態度を翻した。

 所有権移転登記は、登記原因を、和解調書に定められた「訴訟上の和解」とし、東急不動産が和解調書に基づき単独申請した。東急不動産は供託金を自ら取り戻した上で、三井住友銀行深川支店において被害者側に現金で金銭を支払った(6月28日)。

 問題マンションの販売だけでなく、和解調書の履行においても東急不動産の誤りが示されたことになる。

 冒頭で紹介したホームページの「お詫び」についても、この文脈で捉えたいが、理解できないのは2007年10月1日という掲載時期である。被害者が騙し売りを認識して東急リバブルに照会したのが2004年8月であり、大きく遅れた「お詫び」である。多くの企業不祥事では遅すぎる対応が不祥事そのものと同じくらいの非難を浴びているが、東急不動産のマンション販売トラブルにも同じことが言える。

 しかもタイミングも不明である。契約解除の意思表示を通知したのが2004年11月、消費者契約法に基づき売買契約を取り消したのが2004年12月、東急不動産を提訴したのが2005年2月、東急不動産敗訴判決が出たのは2006年8月、訴訟上の和解が成立したのは2006年12月、東急不動産が売買代金返還金を支払ったのが2007年6月と節目の時期は色々あるが、それらとは全く無関係な時期である。

 和解調書の履行が全て完了した訳でもない(所有権移転登記を巡るトラブルで中断したために、アルス301号室の明け渡しが遅れている)。被害者にとってはありがたみ味が全くない「お詫び」である。

 東急不動産から被害者に対して直接「お詫び」が示されたことは一度もなく、また、ホームページへの「お詫び」掲載について事前にも事後にも説明や連絡がなされたこともなかった。的外れな時期に東急不動産が「お詫び」を掲載した真意は不明だが、少なくとも被害者と向き合うためにした訳ではないことは確かである。
http://hedo.at.infoseek.co.jp/m/home/owabi.html
posted by 林田力hayariki at 23:20| Comment(0) | 住まい | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする